ダンパーのめんどくさいウンチク。

前にダンパーの事をあっちそっちに書きました。今回は引きダンパーとか引かないダンパーについて。

 

先日のタミチャレで「なんで引きダンパーにしてるんですか。そっちのほうが速いんですか。」って聞かれました。わかる。その気持ちわかる、と思いました。

すごく前、ラジコンメーカーの人に、何故引きダンパーにするのかって聞いた事があります。その時の回答は「販売する前の段階(設計とかテストって意味だと思う)で、基本的に引きダンパーで走る事を前提にしているから」でした。物理的な観点ではない回答というのはわかりやすいなと思いました。以下ダンパーはショックアブソーバー(略:ショック)と書きます(このほうが車的表現に近いはず)。

結論を先に言えば、ショックは「基本的に」引きダンパーであること。です。こうするべきだというわけでは無く、引きダンパーをベースに考えないとショックの基本的な仕事が理解できないという事です。

ショックの仕事は減衰する事です。路面からの入力を減衰する、バネの振動を減衰する。ですので、減衰する仕事以外を考えない事が基本であり、減衰できる構造である事があたりまえの要素です。そして減衰させる方法は、ショック内の流体(オイル)によるピストン上下間の圧力差を熱に変換して外部に放出する、という事です。

引きダンパーでは無いダンパーが基本から脱しているというのは、上記の減衰できる構造ではない条件に近づいている為です。ダイヤフラムがあるせいでイメージしにくいのですけど、エアレーションダンパーだととても理解しやすいです。例えばダイヤフラムを現状のゴムから金属の固い板にしたら簡単ではないでしょうか。引きダンパーで組まないショックは全く縮めないものになり、減衰どころか全くストロークできないものになります。※正確にはキャビテーションが発生するところまでいくと縮みます。ショックケース内のシャフト体積が増える分オイルの逃げ場が必要なのですが、ダイヤフラムが金属で変形してくれない為ストローク(減衰)できないのです。

金属板をダイヤフラムに戻すとシャフト体積分の「オイル逃げ」はできますけれど、逃げた分ダイヤフラムは変形し、ゴムであるが故に戻ろうとします。この戻ろうとする力は減衰特性に影響します。

引きダンパーが基本だという事は、これだけでも十分な説明になります。ダイヤフラムの反力やシャフトの体積変動などという条件は、基本的な減衰装置として付加するべきではないのです。ショックは外部からの変位(ストロークさせようとする力)があって初めて作動/影響しなければいけない装置で、勝手に作動するような装置であってはいけないのです。ショックである仕事をする環境は外乱の無い状態、つまり引きダンパーだという事です。

いやいや引きダンパーにすると勝手にシャフトが戻っていくからダメじゃん。というのも出てきます。そうなのですが、仕方ない部分でもあります。ショックの理想形はスルーロッドダンパー(シャフトがシリンダーを貫通しているもの)だと思いますが、ショック内のピストン位置やオイルシール、そもそもの構造的理由で現実的では無いと思います。減衰におけるピストン上下間の圧力差という観点からすると、ダイヤフラムを使っている現状のショックはイニシャルで勝手に戻る状態にせざるを得ない部分がありそうです。※別タンク式のショックがあればできなくは無いかも…

 

余談ですが、何故引きダンパーじゃないものがメジャーになっているか…。歴史的背景は不明ですが、一番売れてるメーカーが市販品を販売する上で、引きダンパーは面倒でホビーっぽくない→誰でも組みやすいものを提案しよう→引かないダンパーでいいじゃん→一番売れてるからそれがスタンダードみたいになった。こんな流れなのかと想像します。

 

速い/遅いという観点でいうと、引かないダンパーだから遅い、引くから速いというのは間違っています。今そこにある車の状態と運転手の好みで、どちらか合っているほうを選択したら良いと思います。車体はタイヤもシャーシもボディもショックもバネも全部組み付けられた状態で速いか遅いかを判断しますから。この話はあくまで構造上の話です。

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